あがり症(極度の緊張)は、場馴れで克服は困難?

あがり症の症状・治療・インデラル

あがり症とは

あがり症とは

あがり症とは、人に注目されるような場面で自然にふるまえなくなる症状です。

顔が赤くなる、汗をかく、声が震える、手が震えるなど、さまざまな症状が出ます。

赤面恐怖症とか、対人恐怖症といわれるのもあがり症の1種です。

あがり症は日本人にはたいへん多い病気とされています。ある調査では、あがり症で社会生活に支障が生じている人の割合は18.2%と報告されています。

男女別では男性が13%、女性が22パーセントと、女性が多くなっています。

欧米人にもあがり症の人(シャイな人)はいますが、ホームパーティが苦手な「パーティ恐怖症」や人前で吐いてしまうことを恐れる「嘔吐恐怖症」が多いと言われています。

これに対して日本人に多いのは「スピーチ恐怖症」や「視線恐怖症」です。

あがり症の特徴は、人前であがる経験をすると同じような場面でまたあがってしまい失敗するのではないという「予期不安」が生まれることです。

予期不安はさらに強いあがりを誘発して悪循環になりがちです。

したがって、あがり症は場数を踏むことで治ると考えるのは、必ずしも正しくありません。

あがりをくり返すことで予期不安は大きくなり、スピーチなどに対する「苦手意識」が定着してしまうことになります。

あがり症が社会生活に重大な支障が生じるほどになると「社交不安障害」という精神障害と診断されます。

そこまでいく例はまれですが、いろいろな社交場面で強い苦手意識を持ってしまわないように、早めの対処が必要です。

あがり症を克服するためにもっとも役に立つのは「成功体験」です。

スピーチなどの苦手な場面をあがらずにクリアできたという経験が予期不安や苦手意識を小さくしていきます。

そういう場面の前に服用しておく「インデラル」という頓服薬もあります。

あがり症の原因

人前でなにかをするときに過剰に緊張して、自然なふるまいができないのがあがり症ですが、緊張が過剰になる理由には「自信がない」「失敗して恥をかきたくない」、「自分を良く見せたい」という心理があります。

これは誰にでもある心理ですが、この心理が強いと緊張が高まり、あがり症といわれるさまざまな症状が出ます。

赤面する、ドキドキする、手が震える、口が乾く、などのあがり症の症状は、緊張によって自律神経のバランスがくずれることで生じます。

自律神経は、緊張する場面ではたらく交感神経とリラックスした場面ではたらく副交感神経がバランスを取りながら、身体のさまざまな機能をコントロールしています。

あがり症の症状は、交感神経が過度に興奮することによる生理的な反応です。

誰でも緊張する場面では交感神経が優勢になりますが、それで過度になると多量の汗をかく、筋肉がこわばるなどの異常な反応が生じます。

自律神経の働きをコントロールしているのは、アドレナリンやセロトニンなどの脳内神経伝達物質です。

交感神経が興奮するのは、その1つのノルアドレナリンと呼ばれる脳内ホルモンの分泌が増えたときです。

例えば人前で話をするときには、脳からノルアドレナリンが放出されて交感神経が活発に働き、慎重に言葉を選んで話ができるように精神を集中させて脳の働きを活性化させます。

しかし、このノルアドレナリンが過剰になって交感神経のはたらきも過剰になると、本来の目的には反する余計な生理的な反応が出てきます。

話をするときに声が震える、口が乾く、汗をかく、などはまったく目的にそぐわない反応ですね。

あがり症の原因は、内分泌的な側面から見ると、脳内物質のノルアドレナリンが大量に分泌されて、交感神経が過度に興奮することです。

あがりそうな場面であらかじめ服用しておく頓服薬の「インデラル」は、脳内のノルアドレナリンの濃度を下げて、交感神経をしずめるお薬です。

あがり症の症状

あがり症の症状

あがり症の症状には次のようなものがあります。

  • 人前で話をするときに、声が震える、口が乾く、ドキドキする、汗をかくなどの症状が出てうまく話せない。
  • 異性の前にでると顔が赤くなる。
  • 目上の人の前では異常に緊張してうまく話せない。
  • 見知らぬ人に話しかけられない、あるいは話しかけられると緊張する。
  • 人の視線を浴びる(注目される)のが苦手だ。
  • 人に見られていると手が震えて字が書けない。
  • あまり親しくない人と会食すると箸が自由に使えない。
  • 周りに人がいると電話の応対がスムーズにできない。

あがったときに生じる身体症状には次のようなものがあります。

  • 動悸、息苦しさ
  • 声や手足の震え
  • 顔が赤くなる、または蒼白になる
  • 口が乾く
  • 汗をかく
  • 胃が痛くなる、吐き気がする
  • 尿意をおぼえる
  • 頭が真っ白になり、考えることができない
  • 歩き方が不自然になるなど、筋肉がこわばってスムーズな動作ができない

誰にも多少はこのような症状がありますが、それが強くて失敗することが多く、精神的におおきな負担になっているのがあがり症です。

あがり症で恥ずかしい思いや失敗体験をすると、また同じような場面で緊張して失敗するのではないかという不安が生じます。

これを「予期不安」といい、緊張をさらに強くする要因になります。

あがり症の治療薬インデラルとは

あがり症治療のインデラル

インデラルはあがり症の人の心臓のドキドキをしずめて、気持ちを落ちつかせるお薬です。

有効成分のプロプラノロール塩酸塩は、人が緊張したときに分泌される脳内物質のノルアドレナリンの受容体をブロックして、交感神経の興奮を抑制します。

それによって心拍数を下げ、血圧を安定させる効果があります。薬の分類ではβ遮断薬に属します。

インデラルは、もともとは高血圧や狭心症、不整脈の治療薬でしたが、あがり症にも効果があることが分り、現在はその目的でも使用されています。偏頭痛の予防薬としても使われています。

▼インデラルの効果

あがってしまいそうな場面にでるときに、あらかじめインデラルを服用しておくと、動悸、声の震え、手足の震え、身体のこわばり、赤面などのあがり症の症状を予防することができます。

インデラルはあがり症を根本的に治す薬ではありませんが、インデラルを服用して「あがらない体験」をすることで、またあがってしまうのではないという予期不安を軽減して、自信をつけることができます。

この成功体験で自信がつけば、インデラルを服用しなくてもあがらなくなることも期待できます。

▼インデラルの服用法

インデラルは、スピーチやプレゼンテーションなど、あがりそうな場面に出る1時間くらい前に服用します。効果は3~4時間持続します。

あまりひんぱんに使用すると、同じ服用量では効き目が弱くなってくるので、できるだけ服用回数を少なくするのが、いざというときに役立てるコツです。

▼インデラルの副作用

インデラルに重い副作用はほとんどありませんが、人によってめまいや倦怠感が出ることがあります。服用に慣れると副作用は軽減します。

血圧を下げる薬や心臓の薬を飲んでいる場合は、事前にインデラルの服用を医師に相談してください。

▼重症のあがり症の治療薬

社会生活に重大な支障が出るようなあがり症は社交不安障害と呼ばれます。

社交不安障害の薬物療法ではインデラルのようなβ遮断薬のほかに、抗うつ剤のSSRIや抗不安薬が処方されています。

薬物療法以外に認知行動療法などの心理療法が並行して行なわれることがあります。

あがり症の克服

あがり症を予防する頓服としては「インデラル」がありますが、あがり症を根本的に克服するにはどうしたらよいのでしょうか。

▼行動療法

あがり症は場数を踏めば改善するよく言われますが、これは心理療法的に言えば「行動療法」の1つです。

緊張する場面を避けようとするのではなく、あえてそれに近づくことによって経験を重ねて、恐怖感や緊張を軽減していく方法です。

しかし、これは失敗を重ねることによって「予期不安」が大きくなり、かえって症状が悪化する危険もはらんでいます。

少しずつ緊張する場面に慣れていくことが必要で、泳げない人をいきなり海に放り込むというような方法は避けるべきです。

重症のあがり症である社交不安障害の行動療法は、専門家の指導の下に慎重に行なわれる治療法です。

▼認知療法

心理療法には「認知療法」と呼ばれる治療法もあります。これは、人前で過剰に緊張する感じ方や考え方のクセを自覚して修正していこうという治療法です。

あがり症の人には、自分を過小評価する考え方や、実際の自分より人によく見られたいという気持ちがある場合が多いといわれています。

こういう考え方のクセ(認知のゆがみ)や感じ方のクセを修正して、正しい自己認識をもてるようにするのが認知療法です。

世界的に有名な森田式療法は日本で開発されたあがり症や赤面恐怖症の治療法で、広い意味の認知療法の1つです。

このような認知のゆがみを修正することは、ある程度自分でも行えます。

ありのままの自分を肯定的にとらえてそれを認め、実際の自分より人によく見られようとする気持ちをなくしていくことが大切です。