ジェネリック医薬品|効果・安全性・安価な理由
目次
ジェネリック医薬品とは
ジェネリック医薬品とは、先発品(新薬)と同じ有効成分を同量配合している安価な医薬品です。有効成分を同量配合しているので、効果効能も理論的には同じになるため、医療費の削減のために世界中で活用されています。
医薬品メーカーが研究開発して販売した先発品の特許が切れたことで、他社が研究開発費をほとんど掛けずにジェネリック医薬品を販売できるので、先発品よりもずっと安く販売されています。
ジェネリック医薬品と先発品(新薬)の違いは?
病院や薬局でお薬を処方してもらうとき「ジェネリック医薬品を希望しますか?」なんて聞かれたことはありませんか?なんとなく、ジェネリック医薬品だとお得になると聞いているので「はい」と答えている方、多いのではないでしょうか?
では逆に「先発品」という言葉を聞かれたことはありますか?先発品は、医薬品メーカーが研究開発を重ねて製品化された新薬のことです。新薬と言っても何十年も昔に開発された医薬品もあるので、医療業界では先発品と呼ぶことが多いのです。
実は、医薬品の研究開発には、数年~数十年の歳月と数億~数十億円以上の費用がかかっています。特定の病気に対して効果がある成分を抽出・合成し、ヒトが使用しても安全か?本当に効果があるか?を何段階もの動物実験・治験を繰り返し調べていきます。
そして、日本であれば厚生労働省から安全かつ効果があることを認められた医薬品が保険適用となり、病院や薬局で使用されるようになります。医薬品が製造コストに比べて値段がすごく高いのは、この研究開発にかかる人件費や研究費を回収するためです。
この費用を回収するために、医薬品を開発した会社が特許を申請すると、20年ほどの期間はその医薬品を独占販売することができます。そして特許が切れると、先発品と有効成分が同じで安価な医薬品であるジェネリック医薬品が販売できるようになります。
ジェネリック医薬品は、先発品と有効成分が同じなので効果も基本的には同一です。もちろん販売前に厚生労働省の定める安全性試験や生物学的同等性試験をクリアしていますので、安全性も効果も保証されています。
しかし、研究開発にお金や時間がかかっていないので、先発品よりもずっと安く販売しても十分利益が出ます。そのため、人気のある医薬品や高額な医薬品は多くの医薬品メーカーがジェネリック医薬品を販売する傾向があります。
ジェネリック医薬品の安全性と効果
ジェネリック医薬品の安全性と効果が国家基準の試験によって証明されているとは言うものの、怪しいブランドのパクリ商品のようなものという認識をされている方は非常に多いのが現状です。
ですが、ジェネリック医薬品を批判している人の多くは専門家ではなく、一部のニュースや週刊誌をみて不安になっているだけで、医薬品に対する専門知識があまりなく、よくわからないけどなんだか不安という方がほとんどです。
そして、ジェネリック医薬品の安全性や効果が心配な理由は「安い」ということではないでしょうか?しかしジェネリック医薬品が安いのは、質の悪い材料を使っているからではありません。
ジェネリック医薬品が安いのは、新薬を開発するためにかかる膨大な年月と人件費、実験費用などがカットされているからです。もちろん販売されるにあたっては、新薬と同様に製造過程・品質・安全性・効果がしっかりチェックされています。
そもそもジェネリック医薬品は、先発品と同じ有効成分を同量配合することが決められています。見た目(大きさや形)・味(添加物)が違っていても、有効成分が同量ならば効果や副作用に違いが出ることは考えにくいです。
さらにジェネリック医薬品は販売前に、生物学的同等性試験をクリアしています。この試験はジェネリック医薬品と先発品の薬物動態をチェックし、吸収速度や吸収量に差がないか調べる試験です。
有効成分が同一であり吸収速度や吸収量も差がないことが証明されている。もちろん製造過程や設備、品質や安全性についてもチェックをされた上で販売されている。これが、ジェネリック医薬品だということは知っておいてほしいです。
ジェネリック医薬品はどのくらい安いの?
ジェネリック医薬品の多くは、先発品の2~6割引の価格で販売されています。これほど価格差があるのは先発品の売上と原材料費が関係しています。売上が多い医薬品ほどジェネリック医薬品の割引率が高い傾向があり、原材料費が安い医薬品ほど割引率が高い傾向があります。
病院や調剤薬局で処方される場合は、この薬価以外に診察料や調剤基本料など諸経費がかかってくるので、ジェネリックに変更しても実際に支払う金額は1~3割引くらいになる方が多いです。もちろん高額な医薬品を使用している場合は、5割引くらいになる方もいますが、多くの方は1~3割引くらいです。
しかし自費診療の場合は話が変わります。ダイエット、ED治療、薄毛治療(AGA治療)など保険適用されていない医薬品を自費購入する場合は、ジェネリック医薬品による割引がダイレクトに反映されます。これらの医薬品は値段が高めで、世界的にみると売上もかなり多いので、ジェネリック医薬品によるコスト削減が期待できます。
ただし、こうした商品のジェネリック医薬品は日本製のものもありますが、海外製の商品が非常に多く個人輸入されている方も多いです。ただし海外製の商品は用量が日本とは異なることも多いため、日本での用法用量を確認してから服用するようにしてください。また海外製の商品は偽薬などのリスクもあるので、SNSを通じた個人間取引や怪しげなサイトでの購入は控えるようにしてください。
ジェネリック医薬品の普及
個人だけでなく国の医療費削減のために、国が推奨しているジェネリック医薬品ですが、まだまだ日本での普及率はそれほど高くありません。国内でのジェネリック医薬品普及率は、2020年9月時点で78.3%もうすぐ80%に到達するところまできました。
ジェネリック医薬品のシェア率が高いのはビタミン剤であり90%を超えていますが、外用薬(湿布・軟膏・目薬など)や抗がん剤、抗生物質などではまだまだ伸びしろがあり、ます。外用薬では使用感、抗がん剤や抗生物質では効果への懸念に不安があるようです。
しかし世界的に見れば、ジェネリック医薬品は2015年時点ですでにアメリカは90%以上。続いてドイツが83%、イギリス73%、スペイン、フランスが65%と当時から、かなり高い普及率を誇っていました。日本はようやく追いついてきたところという感じです。
この背景には、アメリカなど多くの国では日本の国民健康保険のような制度がないということが関係しています。富裕層は生命保険のような制度に加入している人も多いですが、多くの場合自費での支払いなので、同成分であれば値段の安いジェネリック医薬品へのニーズが高くなります。
日本の国民健康保険制度や公費制度は素晴らしいのですが、ジェネリック医薬品の推進に関しては保険が価格差をカバーしてしまうので、最大のメリットである安さをあまり感じられなくなり、推進がなかなか進まなかったと考えられています。
さらにアメリカには代替調剤制度という方法が昔からあります。これは患者さんの希望に合わせて、お医者さんが処方してくれたお薬を受け取る際に、薬剤師さんがジェネリック医薬品に変更してあげることができるシステムです。
また、ドイツやフランスなどではジェネリック医薬品がある場合、ジェネリック医薬品は保険が適用されますが、先発薬は自費となります。そのため、ジェネリック医薬品を選択する人が多くなっています。
イギリスなどではお医者さんが処方箋をかくときに薬の製品名を表記せず、必要な成分だけを表記する日本の一般名処方のようなシステムが以前から導入されており、その成分が含まれている医薬品を自由に選ぶことができます。
このように海外では、ジェネリック医薬品を推進するための環境が以前から整っており、結果としてジェネリック医薬品への評価・認識も正しいものとなっています。日本でもジェネリック医薬品への認識が変わりつつありますが、まだまだ不十分と言えます。
ジェネリック大国のインド
「ジェネリック大国といえばアメリカじゃないの?」と思われる方が多いと思います。確かに普及率の面から言えば90%以上のシェア率を誇り、使用量も世界No.1であるアメリカは間違いなくジェネリック大国です。
違う見方をするとジェネリック大国はインド!と言えます。これはどういうことなんでしょうか?実はインドのジェネリック医薬品に関して特筆すべきなのは、世界の20%を占める海外への輸出量とジェネリック医薬品の製造量です。
インドから輸出されているジェネリック医薬品は、2018~2019年で約144億ドル。日本円に換算すると1.5兆円を超えています。これがアメリカ・アジア・ヨーロッパ・ロシア・中東・アフリカ・オセアニアに輸出されているのです。
ではどうしてこんなにインドでジェネリック医薬品が作られているのでしょうか?それにはインドの技術力や政策などももちろん関係していますが、もっとも重要なポイントはインド独特の特許法です。
通常、ジェネリック医薬品を作る際には物質特許と製法特許という2つの特許をクリアする必要があります。物質特許は有効成分に関する特許です。製法特許は製薬過程、工程に関する特許です。
しかし、インドでは物質特許がありません。そのため、有効成分が全く同じであったとしても、作る過程が違うと認められればジェネリック医薬品作れてしまいます。すると、瞬く間に製法だけが違うジェネリック医薬品が出てきてしまいます。
製薬会社はある程度かかった費用を回収することができないと、次の薬開発を行うことができません。となると医療現場自体が大きな損失をこうむります。こうした事情を考慮して、多くの国では2つの特許が採用されています。
インドはこの縛りがないため、ジェネリック医薬品開発に力を注ぐ人が多く、次々にジェネリック医薬品が発売されています。でもなぜインドがこの独特な特許制度を採用しているのでしょうか?
インドで製造されているジェネリック医薬品は、多くの貧しい国や地域の人を救うために役立てられています。もちろんインド国内の貧困にあえぐ人たちへの対策でもあります。インドは「途上国の薬局」ともいわれ、マラリヤやエイズ、結核などのジェネリック医薬品を途上国に届けるうえでも活躍しています。
ただ、こうしたジェネリック医薬品が大量に出回ることで、損害を被る国があることも事実です。ジェネリック医薬品を語るうえで外せないインド、問題もありますがジェネリック医薬品が広まっていく過程で欠かせない存在であることも間違いありません。
ジェネリック医薬品と「国境なき医師団」
先発品と有効成分が同一であり、安価に入手できるジェネリック医薬品は「国境なき医師団」において、途上国や難民の命を救うためになくてはならない存在です。
途上国では、先進国においては命を脅かす危険すらない病気が原因となり、毎日多くの命が消えていきます。また、近年では増え続けている難民の死亡率も深刻な問題となっています。
こうした現場で医療を行う国境なき医師団において、予算のなかで必要な医薬品を入手するのは困難です。もちろん流通や政情不安などいろんな問題があるのですが、医薬品が高いことが何よりの問題です。
日本で暮らしていると、国民健康医療保険制度があるので、1~3割の負担で済みますが本来はその数倍の価格が医薬品の仕入れにかかっています。日本でも高いのに、途上国ともなれば非常に負担が大きいです。
国境なき医師団が主に出向いていく、途上国や難民に対しての治療はもちろん保険がありません。こうした現場で大活躍してくれるのがジェネリック医薬品です。
最近はインドをはじめとしたアジア圏で製造されたジェネリック医薬品が大半を占めています。特にエイズ流行防止薬、抗結核薬、抗生物質、ワクチンなど実に90%近くがジェネリック医薬品です。
ジェネリック医薬品に反対する動き
しかし、ジェネリック医薬品に反対する動きもあります。ジェネリック医薬品が次々と製造されていくと、新薬を開発する動きが制限されていくので、新薬の独占保護期間を延長または強化し、ジェネリック医薬品が参入できないようにしようとする動きがあるのです。
政治上、経済上のいろんな思惑が絡んでいるのかもしれませんが、これも正当な意見であることは間違いありません。新薬の開発が遅れることで救えなくなる命や治るはずの病気が治らないということも考えられす。
医療はボランティアのような側面が強く、利益よりも公共福祉を優先すべきケースが多く、その分国による補助が大きい業界ではありますが、あくまでも会社であり利益の追求こそが指名であることは間違いありません。
どちらが正しくどちらが間違っているという問題ではなく、上手く折り合いをつけながらバランスをとるべき問題であるということは知っておいて頂きたいです。
オーソライズドジェネリックという新たな選択肢
近年、オーソライズドジェネリックという言葉をよく耳にするようになりました。オーソライズドジェネリックとは、先発品と添加物や製造工程まで同一のジェネリック医薬品です。
オーソライズドジェネリックを製造できるのは、先発品の製薬メーカーの関連会社もしくはライセンス契約を結んだ製薬メーカーであり、ジェネリック医薬品よりも少し値段が高いですが、見た目以外は完全に同じなので安心感が違います。
日本では他のジェネリック医薬品よりも少しだけ早く販売できるなどのメリットもあり、急激にシェアを伸ばしています。ジェネリック医薬品に抵抗がある方にも勧めやすいので、特に精神科などでは重宝されています。
このように先発品とジェネリック医薬品の中間的な販売方法は今後も増えてくると思います。そして先発品とジェネリック医薬品が共存共栄するようにバランスがとれていけば、ジェネリック医薬品という言葉すらいずれなくなるかもしれません。




















