早漏(PE)とは|症状・原因・治療法
目次
早漏とは
早漏(PE:premature ejaculation)とは、性行為中に我慢できず、すぐに射精してしまうことをあらわしています。
射精障害の中でも、最も多くの方が悩んでいる病気として知られており、全世界での罹患率はおよそ30%と推定されています。
射精までの時間についての具体的な定義はありませんが、一般的には「挿入してから1分以内に射精をしてしまう」状態であれば、早漏であると考えられています。
国際性機能学会では、①挿入から射精までの時間が短い(1分以内)、②射精までのタイミングがコントロールできない、③早漏であることに関して苦痛を感じており、パートナーとのトラブルがある場合には早漏であると考えられています。
射精までの時間が1分を超えている場合でも、本人やパートナーが期待される時間よりも早く射精してしまう状態であれば、早漏として診断される場合もあります。
早漏の原因
早漏は、自律神経失調症の一種とも考えられています。自律神経は交感神経と副交感神経のバランスで、さまざまな心身のはたらきをコントロールしています。
交感神経は車のアクセルにたとえられており、緊張して仕事をするときやスポーツで戦うときなどに優位になります。一方で、副交感神経は車のブレーキにたとえられており、リラックスしているときや睡眠中に優位になります。
ペニスの勃起は、副交感神経が優位になっているリラックス状態のときに生じますが、射精の瞬間は交感神経が優位に切り替わります。性行為におけるピストン運動によって亀頭は快感を受け取りますが、一定の時間をかけてそれを高めていくことで、副交感神経が交感神経に切り替わって射精が起こります。
何らかの原因により、この交感神経への切り替えが早く行われてしまうと、早漏を引き起こしてしまいます。
早漏による問題点
早漏の問題点として、パートナーを満足させることができないことにより性生活が充実しないことや、男性自身が自信をなくしてしまうことなどが挙げられます。
ストレスを感じる結果、性生活そのものを避けるようになり、独身男性の恋愛・結婚への積極性を失わせることや、夫婦生活の破綻につながることもあります。
早漏は、欧米諸国では治療の対象となる病気として知られていますが、国内では一部のED専門病院で治療を受けられる以外には、治療体制が整っていないのが現状です。
海外では、2009年にはダポキセチン(商品名:プリリジー)という内服の治療薬が認可されていますが、国内では現時点では承認されていません。
早漏の種類
早漏になる原因として、「過敏性」「心因性」「衰弱性」の3つのタイプ、またはこれらの組み合わせが知られています。
過敏性早漏
ペニスやその周りの皮膚の神経が敏感になることにより、性的な興奮が脳内で絶頂に達していなくても、射精をしてしまう状態のことをあらわしています。
性欲や勃起力の強い、10~20代に多いタイプの早漏症で、健康的な人が発症しやすいともいわれています。
仮性包茎などで亀頭が摩擦の刺激に過敏になっていることにより、過敏性早漏となる場合もあります。
心因性早漏
性行為に対するストレスやトラウマを引き金にして、交感神経の働きが活発になることにより、射精までの時間が早まってしまう状態のことをあらわしています。
過去に早く射精してしまった経験がある場合などには、「次も早く射精してしまうのではないか」という不安が心に残り、心因性早漏の原因となると考えられています。
仕事や人間関係などのストレスによっても、同じように交感神経の働きが活発になり、心因性早漏につながることもあります。
以前は、早漏の主な原因は過敏性早漏であると考えられていましたが、現在では心因性早漏を原因とする考え方が主流になっています。
衰弱性早漏
加齢による身体の衰えを原因として、テストステロンなどの男性ホルモンの分泌量が減少することにより、射精をコントロールする射精管閉鎖筋などが衰えることで、射精を我慢できなくなる状態のことをあらわしています。
筋力が低下することにより、射精時の勢いも低下してしまいます。
男性ホルモンの分泌量が低下する、40代以降に多くみられるタイプの早漏症です。
勃起不全(ED)と早漏の関係
勃起不全(ED:Erectile Dysfunction)とは、勃起が起こらないだけでなく、硬さが不十分、勃起状態が維持できないなど、満足な性交が行えるだけの勃起が得られない状態のことをあらわしています。
早漏とは異なる病気であり、区別して考えられていますが、勃起不全と早漏の間には密接な関係があると考えられています。
実際に、勃起不全で悩む方の1/3は、早漏を合併しているとも言われています。勃起不全を発症している方の多くは、勃起を維持するために強い刺激を必要とするため、その刺激によって射精までの時間が短くなってしまいがちです。
さらに、勃起を維持できる時間も短くなっているため、早い時間で射精に至ろうとしてしまい、結果として早漏になってしまう傾向にあります。
そのため、ED治療薬自体には早漏の改善効果は認められていませんが、ED治療薬を内服することにより、合併していた早漏が改善することも珍しくありません。
早漏治療薬
早漏治療薬として、日本国内で正式に適応を取得している医薬品は、現在のところありません。
多くのクリニックでは、海外で早漏治療に用いられている医薬品を輸入するか、国内で他の疾患の治療に用いられている医薬品を適用外使用することが一般的です。
患者が国内で早漏治療薬を入手するためには、クリニックで自費医薬品(保険適用外)として処方を受ける必要がありますが、診察代と薬剤費を合わせて数千円~数万円の費用が必要です。
早漏治療薬を入手するもう一つの方法として、個人輸入を利用する方法があります。
こちらは、比較的安価で入手することが可能ですが、偽物のリスクもあるため、信頼できる輸入代行業者を利用することが重要です。
プリリジー(成分名:ダポキセチン)
現在、早漏防止薬として承認されている治療薬は、ダポキセチンという成分を配合した「プリリジー」だけです。
プリリジーは2009年に開発された薬で、現在世界60ヶ国あまりで承認されていますが、日本では現時点では承認されていません。ただし、2012年に厚生労働省によって輸入することは許可されているため、一部のクリニックや個人輸入によって入手することは可能です。
有効成分として配合されているダポキセチンは、もともとは抗うつ剤として開発された成分で、脳内物質のセロトニンを増やして気分を安定させる作用があります。
近年では、SSRI(選択的セロトニン再取込阻害薬)とよばれる種類の薬剤が抗うつ薬の主流となっていますが、ダポキセチンもその1種です。
開発段階で、特に早漏の改善効果が大きいことが分かり、早漏治療薬として承認されました。多くの種類の早漏に対して効果が期待でき、服用後1時間くらいで効果があらわれて、4~5時間にわたり効果が持続します。
早漏は軽度のED(勃起不全)を併発していることが少なくありませんが、ED治療薬と併用することもできます。
また、ダポキセチンは対症療法として用いられる薬剤ですが、継続して使用することで早漏予防効果が強まることも分っています。
アメリカでの承認前の臨床試験では、射精までの時間が平均54秒であった早漏症患者において、初めての服用で平均2.5分に延長したことに加えて、性行為のたびに服用することで、3ケ月後に平均3.8分まで延長したことが報告されています。
プリリジージェネリック
プリリジーは、日本では処方している病院が少なく、価格も比較的高額です。
同一の有効成分ダポキセチンが配合されたジェネリック医薬品は、1/10以下の低価格で購入することが可能です。インド製のプリリジージェネリックには「ポゼット」や「エバーラスト」などがあります。
また、インドの有名なED治療薬ジェネリックのメーカーは、ダポキセチンにED治療薬を配合した医薬品も発売しています。
早漏とEDが合併している症状に有効で、服用が簡便なだけでなく、コスト的にもメリットがあります。
ダポキセチンにED治療薬を配合したお薬
ダポキセチン+ED治療薬のパターンは、配合されるED治療薬によって、次の3つの種類があります。
バイアグラ系(バイアグラ+ダポキセチン)
- エクストラ・スーパーPフォース
- スーパーPフォース
レビトラ系(レビトラ+ダポキセチン)
- スーパージェビトラ
- スーパービリトラ
シアリス系(シアリス+ダポキセチン)
- タダポックス
- スーパータダライズ
SSRI(選択的セロトニン再取込阻害薬)
世界的には、プリリジー(成分名:ダボキセチン)という内服薬があり、60カ国で承認されていますが、現在のところ国内では承認されていません。
射精には、脳内の興奮を抑える「セロトニン」というホルモンが関与していることがわかっており、セロトニンの分泌をコントロールする薬で治療することが可能です。
そのため、国内では適応外使用となりますが、同様の働きを持つ抗うつ薬(SSRIなど)が処方されることもあります。
代表的な薬剤としては、パキシル(パロキセチン)やジェイゾロフト(セルトラリン)、レクサプロ(エスシタロプラム)などがあります。
本来の作用として抗うつ効果も知られているため、心因性早漏の治療に対しても有効性が期待されています。
早漏防止スプレー・クリーム
早漏改善薬として医学的に認められたものではありませんが、亀頭にスプレーする(あるいはクリームで塗る)タイプの治療薬も用いられています。
このような早漏防止スプレーやクリームの成分は「リドカイン」という局部麻酔剤で、医療分野で広く使われている安全性の高い麻酔剤です。
リドカインは、尿道へのカテーテル挿入時の疼痛緩和や、女性のムダ毛処理のときの痛み止めにも使用されています。
局部麻酔剤を使う早漏防止法は、亀頭の感覚を麻痺させることによって射精を遅らせる方法なので、性行為の快感が損なわれてしまいます。また、挿入前あるいは挿入直後に射精してしまう重症の早漏症では効果が期待できません。
早漏防止スプレーやクリームは、性行為の20~30分くらい前に亀頭部に塗布して、麻酔効果があらわれてから挿入します。薬の効果は1~2時間持続します。薬が乾いてからは女性器に影響を与えることはありませんが、念のためにコンドームを着用することが推奨されています。
また、局部麻酔と同じ仕組みの早漏防止法として、早漏防止用コンドームなどの厚めのコンドームを使う方法もあります。
このような対策は、効きすぎると快感が損なわれ、勃起が維持できなくなる可能性があるので注意が必要です。
早漏の改善方法
早漏治療薬プリリジー(成分名:ダポキセチン)が開発されてから、早漏治療は大きく変わりました。
ここでは、薬物療法以外で効果が期待できる早漏改善方法について、ご紹介していきます。
リラックスできる環境を作る
早漏改善におけるポイントとして、性行為時にリラックスできる環境を作ることが重要です。
お酒を飲める方であれば、適度な飲酒によってリラックス効果が得られるため、飲酒後に性行為に臨むこともおすすめです。
ただし、過度な飲酒はED(勃起不全)にもつながるため、注意が必要です。
射精のコントロール(ストップアンドスタート法)
射精をコントロールできるようになるための方法として、スクイーズ法やセマンズ法などに代表される、「ストップアンドスタート法」という方法があります。
スクイーズ法とは、セックスのときに射精しそうになったら、亀頭の根元(いわゆる裏筋)を女性に指で圧迫してもらい、射精をがまんする方法です。これを数回繰り返してから射精します。
セマンズ法とは、射精しそうになったらピストン運動を止めて、そのまま射精をがまんする方法です。射精感が去ったらピストンを再開します。これを数回繰り返してから射精します。
マスターベーションでこれら方法を応用することも可能なので、日ごろからトレーニングを行うこともおすすめです。
カウンセリングを受ける
特に心因的な早漏に悩んでいる場合などでは、カウンセリングを受けることもおすすめです。
性機能の専門医を受診して、性行為におけるトラウマやストレスについてヒアリングを行い、原因を特定します。
男性のみに原因がある場合もありますが、多くの場合はパートナーと一緒にカウンセリングを受けることにより、早期に改善することが期待できます。
射精管閉鎖筋肉のトレーニング
射精をコントロールする筋力を鍛えるトレーニングで、衰弱性早漏をはじめとする多くのタイプの早漏症に対して、一定の効果が期待されています。
特に、PC筋と呼ばれる骨盤底筋群は、射精のコントロールにかかわる射精管閉鎖筋とつながっているため、PC筋のトレーニングを定期的に行うことがおすすめです。
具体的な方法としては、肛門をギュッと締めて3~4秒間キープし、その後ゆっくりと緩めます。これを10回1セットとして、1日3セットを目安に繰り返すことにより、簡単にトレーニングを行うことが可能です。
生活習慣の改善
早漏の大きな原因の一つに、自律神経の失調があります。
したがって、生活習慣を改善して自律神経のリズムを整えることにより、早漏を改善することが期待できます。
生活習慣の改善には、次のようなものがあります。
- 夜型の生活をやめて睡眠の質を改善して、自律神経を安定させる
- バランスのとれた食生活で、体調の改善をはかる
- 自分なりのストレス解消法を身につける
- 軽い運動をする習慣をつけて、身体の代謝機能を高める
- お酒の飲み過ぎをひかえる
- タバコを止める
また、性行為の場面では、早漏を過度に気にして緊張することが、最も自律神経のバランスを崩す原因になります。
パートナーとの理解を深めることも、早漏の改善において非常に重要です。

















