糖尿病の原因・症状・治療法とお薬を解説

糖尿病とは

糖尿病とは

糖尿病は、血糖値(血液中のブドウ糖の量)が高い状態が続くことによって、血管や神経が障害される病気です。

まれに先天性のものがありますが、ほとんどが食生活のかたよりや運動不足などの長年の生活習慣によって生じます。

糖尿病は初期にはまったく自覚症状がなく、血液検査での血糖値の異常から判明するケースがほとんどです。

全国で患者数は1000万人を越えると推定されていますが、そのうちの多くが病気に気づかないか、気づいても放置されています。

糖尿病の診断には、早朝空腹時の血糖値を測定します。空腹時血糖値が126mg/dl以上あれば糖尿病の疑いが濃厚とされます。126~110mg/dlが境界型いわゆる「糖尿病予備軍」です。正常範囲は110~70mg/dlです。

糖尿病、またはその予備軍と診断されても、医師からはまず食事療法が奨められ、すぐに薬を服用することはまれです。しかし、自覚症状がないことから食事療法は守りにくく、なかなか血糖値が改善しないケースが多数派なのが実情です。

自覚症状がないままに糖尿病が進行すると、異様に喉が渇く、体がだるい、疲れやすい、足がつる、ED(勃起不全)、などの症状が現れます。このときはすでに中期以降のかなり進んだ病状で、糖尿病を発症してから10年ほどたっているのが普通です。

だるさや疲れやすさは、エネルギーになるはずの血糖がうまく細胞に運ばれなくなり、血液中にだぶついているからです。よく足がつるのは神経障害が始まっている兆候で、EDは血管障害が始まっている兆候です。

さらに糖尿病が進行すると、「糖尿病の3大合併症」として有名な、失明の危険がある網膜症、人工透析が必要な腎不全、足の切断が必要になる神経障害(壊疽)などを併発することがあります。

また、糖尿病によって血管障害(動脈硬化)が進行すると、脳梗塞、心筋梗塞のリスクが高くなります。糖尿病に高血圧や脂質異常、肥満が併発していると、脳梗塞などのリスクはさらに高くなります。

糖尿病の原因

食物から血液中に取り込まれた血糖(ブドウ糖)は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによって身体の各細胞に運ばれてエネルギーになります。

このインスリンが先天的に不足しているのが、若年で発症するⅠ型糖尿病です。

生活習慣によってインスリンが不足したり、インスリンの働きがわるくなるのが、おもに中年以降に発症するⅡ型糖尿病です。糖尿病の95%以上はⅡ型糖尿病です。

Ⅱ型糖尿病のインスリン異常は、インスリンの不足、あるいはインスリン抵抗性が高くなることで生じます。

インスリン不足の原因は、食べすぎなどにより日常的に高血糖状態になることでインスリンの大量分泌が続き、膵臓が疲労してインスリンの分泌能力が低下することです。

早い段階でカロリー制限、とくに糖質を制限してインスリンの大量分泌を抑制すると、膵臓の疲労が回復してインスリンを分泌する能力が回復します。また、早めにインスリン投与を開始することで膵臓の疲労を防ぐという方法もあります。

インスリン抵抗性が高いというのは、おもに肥満が原因で分泌されたインスリンの効き目が低下することです。この場合は、肥満を解消することでインスリン効き目が良くなります。

糖尿病改善・予防の生活習慣

糖尿病の改善、予防のための生活習慣は、カロリー摂取をひかえることと、運動習慣をつけて摂取カロリーを消費し血管機能を高めることが2本柱です。

カロリー制限で気をつけたいのは、総カロリーをおさえるだけでなく、とくに糖質や炭水化物の摂取を減らすことです。糖質や炭水化物は消化が早く血糖値を急上昇させるので、インスリンが大量に必要になり膵臓の疲労をまねきます。

食べる量だけでなく食べる順番も大切です。ご飯などの炭水化物を先に食べると血糖値が急上昇します。最初に食物繊維を豊富に含む野菜や海藻を食べることで、血糖値の急上昇を防ぐことができます。

これは「食べる順番ダイエット」として有名になった食べ方ですが、糖尿病の改善や予防にも役立ちます。

まず野菜を食べて、その次に肉や魚のメインティッシュ、最後にご飯などの炭水化物を食べると、食べる量は同じでも血糖値があがりにくく、インスリンの節約になります。

1日に30分くらいの軽めの運動(有酸素運動)を毎日の習慣にすることも、糖尿病の予防・改善に役立ちます。

それによってエネルギーの余剰を防ぐだけでなく、血管機能を高めて血管の老化を予防する、筋肉をつけて基礎代謝を上げる(太りにくい身体を作る)効果があります。

糖尿病の治療法

糖尿病の治療法

糖尿病の治療には、食事療法・運動療法とともに薬物療法があります。

糖尿病の薬物療法は、①膵臓からのインスリンの分泌を促進する、②インスリン抵抗性を改善する、③インスリンを投与する、④糖の吸収を遅らせたり、血液中のよぶんな糖分を排泄する、など作用が違う薬を症状に合わせて使います。

インスリンの分泌を促進する薬には、「アマリール」(成分はグリメピリド)などのスルホニル尿素薬(SU薬)があります。

これはインスリンを分泌する膵臓のランゲルハンス島に作用するお薬です。食事療法と併用することで糖尿病を改善する効果があります。

インスリン抵抗性を改善する薬には、「アクトス」(成分はピオグリタゾン)などのインスリン抵抗改善薬があります。肥満などで、インスリンが分泌されても効き目が低い場合に使用されます。

これらの薬で改善が見られない場合は、注射でインスリンを投与します。最近は早めにインスリン投与を開始して膵臓の疲労を予防するという治療法もあります。

その他に、摂取した食物の消化・吸収を遅らせるα-グルコシダーゼ阻害薬や、血液中の余分な糖分を尿といっしょに排泄するSGLT2阻害薬が使用されることがあります。

どの治療薬も、食事療法や運動療法と平行して使用することが大切です。

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