頻尿とは|症状・原因・治療法

目次

頻尿とは

頻尿とは尿が近い(排尿の回数が多い)ことですが、医療機関での目安としては昼の排尿が8回を超える、または就寝してから排尿に起きる回数が2回を超え睡眠に支障をきたすのが頻尿と考えられています。

頻尿は男女とも年齢が高くなるほど起きやすい症状で、女性は加齢による膀胱機能の老化と骨盤底筋群(※1)の弱化、男性はそれに加えて前立腺の肥大が生じることが関係しています。

※1…骨盤底筋群とは、骨盤のもっとも下でハンモックのように支えている筋肉です。肛門の周囲を取り囲むように存在しますが、加齢とともに弱くなり頻尿や尿失禁の原因になります。

このような加齢に伴う変化によって起きやすくなるのが過活動膀胱です。過活動膀胱は膀胱に尿がそれほど溜まっていないのに収縮して尿意をもたらす病気で、頻尿のほかに、尿意切迫(我慢できない強い尿意)や尿漏れなどの症状があります。

通常は膀胱に尿が200mlくらい溜まると尿意が生じますが、300〜400ml溜まるまではトイレに行くのを我慢できます。しかし過活動膀胱になると、100〜150mlくらいで尿意が生じ、我慢も難しいです。

過活動膀胱になる人は、50代で5〜10%・60代で10〜15%・70代で20〜25%・80代で35〜40%と年齢が高くなるほど割合が増えていきます。患者数に男女の大きな差はありませんが、各年代とも男性がやや多くなっています。

症状では男性は頻尿が多く、女性は頻尿になるだけでなく尿漏れが見受けられます。とくに夜間頻尿と尿漏れは日常生活に及ぼす影響が大きく、QOL(クオリティオブライフ=生活の質)を下げてしまう原因になります。

また若い世代では、膀胱炎による女性の頻尿が多く見受けられます。女性は男性に比べて膀胱までの尿路が短いため、膀胱に雑菌が入りやすく、再発をくり返すケースが少なくありません。

また女性は生理前にホルモンバランスの変化によって頻尿が生じることがあります。妊娠初期(16週まで)はホルモンバランスの変化により頻尿が起こりやすく、妊娠後期(28週以降)にも腹部の圧迫により頻尿の症状が現れます。

頻尿の原因

頻尿の原因は男性と女性で違います。男性は主に前立腺肥大と過活動膀胱が原因となりやすく、女性は主に骨盤底筋群のゆるみと膀胱炎が原因となりやすいです。

男性の頻尿

男性に特有の臓器である前立腺は、膀胱の真下にあり、中央に尿道が通っています。個人差がありますが50歳くらいから前立腺の肥大が始まり尿道を圧迫するようになります。

もう1つの主な原因である過活動膀胱は、膀胱の筋肉(排尿筋)が過敏になり少し尿が溜まっただけで強い尿意を起こす症状です。やはり加齢にともなって起こりやすくなる傾向があります。

女性の頻尿

女性の頻尿の原因となりやすい骨盤底筋群は、骨盤内の内臓をハンモックのように下から支える筋肉で、肛門・膣・尿道を取り囲むようにあります。

出産や加齢によってこの筋肉がゆるくなると、下部尿路症状といわれる頻尿・尿意切迫・尿漏れなどの症状が現れやすくなります。

また若い女性の頻尿の原因として多いのは膀胱炎です。女性は尿道が短いために膀胱に雑菌が入りやすく膀胱炎になりやすいからです。また、妊娠中もホルモンバランスの変化や腹部の圧迫により頻尿の傾向が出ます。

頻尿の改善・予防の生活習慣

頻尿の改善に役立つセルフケアとして「骨盤底筋群トレーニング」と「膀胱訓練」があります。

骨盤底筋群トレーニングとは、骨盤内の臓器を支える骨盤底筋を鍛えるトレーニングです。男性にも効果がありますが、とくに女性に頻尿改善・尿漏れ防止の効果が期待できます。

トレーニングの方法は非常に簡単です。イスに座って、あるいは仰向けに寝て、肛門をゆっくり引き締めて4〜5秒その状態を維持してから緩めます。これを5〜6回くり返します。

肩の力を抜き、骨盤底筋に意識を集中させるつもりで行なってください。このトレーニングはいつでも行えるのがメリットであり、気づいたときにトレーニングする習慣がつくと、いつの間にか症状が改善していることもあります。

膀胱訓練は、できるだけ排尿を我慢することで少なくなってきた著尿量を回復させるリハビリです。

最初は5分間だけ我慢する、次に10分間我慢するなど段階的に時間を長くしていくことで、膀胱の柔軟性が回復して著尿量が増えることが期待できます。

ただし、前立腺肥大で排尿障害が強い人・尿意切迫感が強い人には膀胱訓練は向きません。あくまでも軽症の方に向いていると考えられています。

日常生活での注意点

利尿作用のあるアルコールやコーヒーなどのカフェイン飲料を控えることも、頻尿の改善に効果があります。

寝る前に水分摂取を控えるのは夜間頻尿を減らす効果がありますが、血液の水分が不足して脳梗塞など血栓性の病気を起こすリスクが高まるため、コップ一杯程度は寝る前に飲むべきと考えられています。

頻尿の治療薬

頻尿の治療薬には、過活動膀胱をおさえて膀胱の筋肉をゆるめる薬(抗コリン薬やβ3刺激薬など)が主に使用されます。また前立腺肥大が原因の男性の頻尿には、ジヒドロテストステロンを抑制する薬が使用されるケースもあります。

抗コリン薬

過活動膀胱の治療にもっともよく使用される薬です。膀胱を収縮させる副交感神経の作用をおさえて頻尿・尿意切迫・尿失禁を改善します。

抗コリン薬には非常に多くの種類がありますが、過活動膀胱の治療には膀胱に対して選択的に作用する、副作用が少ない成分が配合されています。

トビエース(フェソテロジンフマル酸塩)が最近はよく処方されていますが、ポラキス(オキシブチニン)もたまに使われているという印象を受けます。

β3受容体刺激薬

膀胱の筋肉にあるβ3アドレナリン受容体に作用して、膀胱を弛緩させるお薬です。それによって膀胱の蓄尿量が増やすことで頻尿を改善します。ベタニス(ミラベグロン)がよく処方されています。