高血圧の原因・症状・治療法とお薬を解説
高血圧とは
高血圧は、安静時の血圧が上が140 mmHg以上または下が90 mmHg以上の状態です。
上が130~139mmHgまたは下が85~89mmHgは高血圧の予備軍(境界域)と診断されます。
平成26年の「患者調査」(厚生労働省が3年に1回行っている調査)によると、高血圧で治療を受けている患者は約1,010万(男性445万人、女性567万)でした。これは同じ調査での糖尿病の患者数316万人の約3倍に当たります。
しかし、高血圧で治療を受けていない人は、治療を受けている人の3倍の約3,000万人におよぶと推定されています。
このように高血圧でも治療していない人が多いのは、①自覚症状がほとんどないこと、②病気のリスクが実感できないこと、が原因と考えられています。
高血圧が進行して上が180 mmHgを越すような場合は、頭痛や耳鳴りなどの自覚症状が現れますが、それまではまったく症状らしきものがないのが普通です。しかし、症状がなくても高血圧は血管の老化(動脈硬化)を早める要因になります。
高血圧のリスクについても、すぐに重大な合併症が起こるわけではなく「高齢になったときに脳梗塞や心筋梗塞を発症する確率が高くなる」と言われてもピンとこないのが実情です。
このように、高血圧は症状がないまま動脈硬化の進行を早めて、突然生命に関わる病気をひき起こすことからサイレントキラーと呼ばれていますが、その怖さをなかなか実感できない病気です。
動脈硬化は誰でも年齢とともに少しずつ進行しますが、年齢平均よりも早くなることには警戒が必要です。とくに気をつけたいのは、高血圧に肥満、高血糖、脂質異常が重なることです。
これらの要因が重なるほど動脈硬化の進行が早くなります。とくに内臓脂肪型肥満に高血圧・高血糖・脂質異常(高脂血症)が重なるメタボリックシンドロームは、動脈硬化が加速度的に進行すると言われています。
高血圧でもⅠ度高血圧と呼ばれる比較的軽症の高血圧(上が140~159、下が90~99)は、必ずしも薬を飲む必要はありませんが、食生活や運動習慣で改善することが望まれます。
高血圧の原因
高血圧症の90~95%は、はっきりした原因が不明です。
残りの5~10%は二次性高血圧と呼ばれ、腎臓病やホルモンの異常などの病気が原因です。二次性高血圧は原因となる病気を治療すると改善します。
原因がはっきりしない高血圧は、一次性高血圧あるいは本態性高血圧と呼ばれ、体質や生活習慣など複数の要因が関係していると考えられています。
塩分の摂りすぎは血圧を上げる要因になりますが、約半数の人は塩分摂取量に血圧が左右されないとも言われています。(ただし、血圧が高い人は塩分をひかえる必要があります)
血圧との相関関係が明らかなものに肥満があります。体重が10kg増えても心臓の能力は変わらないので、日常生活での心臓の負担が増えます。
重くなった体をこれまでと同じ装置で動かそうとすると、血圧を上げてより多くの血液を送り出すことが必要になります。
肥満によって血液中の中性脂肪やコレステロールが増えるのも血圧を上げる要因です。それによって血液の粘度が高まり、血行がわるくなるからです。
運動不足も心臓や血管の機能を低下させて、血圧を上げる要因になります。
血管は単なるパイプではなく、必要に応じて収縮・拡張などの生理作用を行なう臓器です。運動によって毛細血管の数も増えます。
この他に、睡眠不足、ストレス、喫煙なども、交感神経を緊張させて血圧を上げる要因になります。
高血圧改善・予防の生活習慣
高血圧を改善・予防する生活習慣でもっとも大切なのは、肥満と運動不足の解消です。
肥満体型でない人にも高血圧はありますが、運動習慣を身につけることで心臓と血管の機能を向上させて血圧を下げることができます。
塩分感受性の高血圧の場合は、塩分の摂取量を減らすことで血圧を下げることができます。
健康な人の塩分摂取量の目安は、1日に男性が8g、女性が7gとされていますが、高血圧の人は6g未満とされています。
これに対して実際の摂取量は平均で、男性が11.1g、女性が9.4g(厚生労働省{平成25年国民健康・栄養調査結果})と、かなりオーバーしています。
上の血圧が160を超える場合は、薬による血圧のコントロールをしないで運動をすることは危険をともないますが、その場合も薬を服用しながらウォーキングなどの有酸素運動をすることで血圧の低下が期待できます。
ニコチンは血管を収縮させて血圧を高めるので、高血圧の人は禁煙する必要があります。
睡眠不足やストレスも血圧を上げる要因です。規則正しい生活で睡眠時間を確保すること、なるべくストレスを溜めないことが大切です。
高血糖や高脂血症も血管の老化を早めるので、高血圧の人は血糖値や中性脂肪値、コレステロール値を上げない食生活をすることが重要です。
高血圧の治療法
高血圧の治療は、食生活や運動などの生活習慣の改善と並行して、必要に応じて薬を用います。
高血圧の治療薬は大きく分けると、①カルシウム拮抗薬、②アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、③アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、④利尿薬、⑤β遮断薬の5種類があります。
カルシウム拮抗薬は血管を拡張して血圧を下げるお薬で、もっともよく使用される降圧剤です。
効果が確実で副作用が少ないのが特徴です。「ノルバスク」やそのジェネリックの「アムロジン錠」などがあります。1日に1回の服用で降圧効果が持続します。
その次によく使用されるのが、血圧を上げるアンジオテンシンⅡという物質の作用をおさえるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)です。「ディオバン」、「バルサルタン」などがあります。
ACE阻害薬もアンジオテンシンⅡに作用するお薬ですが、空咳の副作用があるのでARBよりも処方例は少なくなっています。
利尿薬は塩分の摂取過多が原因の高血圧には確実な効果を示しますが、身体の水分量が減るために、長期間使用すると血糖値や尿酸値を上げるなどの悪影響が出るおそれがあります。「ラシックス」などのループ利尿薬が有名です。
β遮断薬は心臓にあるアドレナリンβ受容体を遮断し、心拍数を減らすお薬です。おもに若い世代の高血圧の治療に使われます。商品には「インデラル」などがあります。
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