【抗生物質】クラビットの効果・飲み方・注意点など

目次

クラビットとは

クラビットは、尿路感染症・クラミジアや淋病などの性感染症をはじめとする幅広い領域の感染症、またウイルス感染時の細菌による二次感染対策など様々な症例に対して使用されています。

有効成分のレボフロキサシンは、ニューキノロン系の抗生物質で、グラム陽性菌・グラム陰性菌・クラミジア菌・マイコプラズマ・レジオネラといった非常に幅広い殺菌効果を発揮します。

ニューキノロン系抗生物質は細菌のDNA複製を阻害することで、細菌の増殖を抑制します。従来の抗生物質に比較すると強い抗菌力と病巣への早い移行性があるため、内服薬が効きにくい難治性の感染症にも使用します。

ただし、近年ではクラビットの使用例が増加し耐性菌が多く発現しているため注意が必要です。そのため、安易にクラビットを使用する・完全に治療が完了するまでに中止することは控えなければいけません。

クラビットとジスロマックの違い

ジスロマックはマクロライド系の抗生物質であるのに対してクラビットはニューキノロン系の抗生物質であるため、同じ抗生物質でも化学構造や作用機序が大きく異なります。

ジスロマックは細菌の発育に必要なタンパク合成を阻害することで抗菌作用を発揮します。一方、クラビットは細菌のDNA複製を阻害することで強力な抗菌作用を発揮します。

クラビットもジスロマックも幅広い抗菌スペクトルを持つため、クラミジアなどの性感染症だけでなく様々な感染症の治療に世界中で多く使用されています。

ただし、クラビットは妊婦や授乳婦への投与が原則的に禁止されていますが、ジスロマックは安全に使用できることやクラビットのほうが抗菌スペクトルが広いためジスロマックより多くの感染症に有効であるなどの違いがあります。

また、クラビットのほうがジスロマックより安価ですが、ジスロマックは1日1回3日間の服用で効果が7〜10日間持続するのに対してクラビットにはそういった持続性はなく5〜7日間服用する必要があります。

クラミジアとクラビット

日本で一番多い性感染症だと言われているクラミジアにもクラビットは有効であり、世界中で使用されています。クラビットは比較的副作用が少なく安全性が高い抗生物質としてよく処方されています。

クラビットは細菌のDNA複製を阻害することで殺菌的に働くため、原因菌であるクラミジアの増殖を抑え死滅させる効果が期待できます。尿道炎や子宮頚管炎などクラミジア感染により炎症が起きてしまった場合も使用可能です。

クラミジアに感染すると尿道痛・排尿痛・性交痛・性器の痒み・膿が出る・おりものの異常・下腹部痛などの症状が現れます。これらの症状がある場合は医療機関を受診し、クラミジアの検査を受けましょう。

クラビットでクラミジアによる性感染症の治療を行う場合、1日1回レボフロキサシンとして500mgを7日間を目安に服用します。他の感染症治療の際は3〜5日程度の服用期間が一般的なので、クラミジア治療においては服用期間が長めになります。

以前はレボフロキサシンとして100mgを1日3回服用という用法が基本でしたが、様々な感染症治療に非常に多く使用されるため耐性菌(クラビットが効かないように進化・変異した菌)の発現が問題になりました。

その後、クラビットを高用量を一気に摂取すると耐性菌ができにくいという研究データが発表されたため、近年では1日1回レボフロキサシンとして500mgという用法が一般的になりました。

個人差はありますが、クラビット服用開始後早ければ1週間ほどで症状が改善しますが、そこで服用を中止すると潜んでいる細菌を見逃し再発してしまう恐れがあるので自己判断での中止はしないでください。

また、服薬終了後の検査を行い陰性が確認されるまでは性行為は禁止であることと、クラビットは妊娠中の女性または妊娠している可能性のある女性は服用できないことに注意してください。

風邪とクラビット

風邪はほとんどの場合においてウイルスが原因であり、クラビットをはじめ抗生物質はウイルスには無効であるため風邪を治すことはできません。

それでもクラビットが風邪のときにされる場合には、主に細菌感染による疾患の可能性がある場合とウイルス感染時の細菌の二次感染の予防であると考えられます。

溶連菌や肺炎球菌など風邪によく似た症状を引き起こす感染症や、稀なケースですが細菌性の風邪である場合はもちろん抗生物質が高い効果を発揮します。どちらの場合でも、特にクラビットは抗菌スペクトルが広いため様々な細菌に有効です。

昔は風邪をひいたら抗生物質という考えが定着していましたが、ウイルス性の風邪には効果がないこと。近年では耐性菌の発現が問題となっていることから安易な抗生物質の使用は控えられています。

膀胱炎とクラビット

膀胱炎の中でも特に多く見られる急性膀胱炎は膀胱内で細菌が感染して炎症を起こす疾患で、膀胱の痛み・頻尿・残尿感・血尿などの症状が起こります。

男性と比べ尿道の短い女性がなりやすく、疲労・ストレス・病気・加齢など身体の免疫力低下や水分摂取不足・排尿障害などによって膀胱炎の発症リスクが上がります。

膀胱炎の原因菌の90%は大腸菌だと言われていて、クラビットなどのニューキノロン系の抗生物質は大腸菌に対して強い抗菌作用を発揮するため膀胱炎治療に非常に多く使用されています。その他の菌の場合でもクラビットは抗菌スペクトルが広く多くの菌に有効です。

淋病とクラビット

淋病は淋菌による性感染症です。治療は基本的には抗生物質による点滴または注射です。セフトリアキソンやスペクチノマイシンなどの抗生物質が使用されています。

抗生物質の体内血中濃度が高ければ高いほど抗菌効果が高く完治しやすくなるため、内服ではなく直接血中に注入できる点滴や注射剤が優先されます。点滴や注射では1回の治療でほとんどの場合完了します。

クラビットは淋病にも有効だと言われていますが、実際の臨床の現場ではあまり使用されていません。内服薬で淋病治療を行う場合はマクロライド系抗生物質のジスロマック(有効成分はアジスロマイシン)が服用されることが多いです。

淋菌は耐性化(薬の殺菌攻撃に耐えられるように細菌が変異すること)の進化がとても早く、クラビットにおいては耐性菌が非常に多く発現しています。そのため淋病治療でクラビットが選択されることは少ないです。

淋病だけでなく感染症が疑われる場合は、まず医療機関を受診して検査を受け、医師の指示に従い疾患に合わせた適切な薬で治療していくことを推奨します。

クラビットのペットへの使用

クラビットは本来は人間用に開発された抗生物質ですが、犬や猫などペットに使用することも可能です。クラビットはペットにおいてフィラリア、下痢、皮膚炎などの治療に使用されることがあります。

ペットに使用する場合は1日1回、有効成分レボフロキサシンとして10mg/kgを服用させます。ペットは身体が小さいので人間が服用する場合よりも身体への負担が大きいです。

副作用の発現リスクを抑えるためにも必要最小限の量で服用させるようにしてください。またクラビットの副作用は基本的には人間と同じですが、ペットにおいては腱断裂と関節の悪化が危惧されているので注意が必要です。

ペットは体重や体表面積の個体差が大きいので用量の判断や調節が難しいです。ペットに何らかの身体の異常があれば、まずは動物病院を受診して獣医師の指示に従って正しい治療を施してあげてください。

ロキソニンとクラビットは併用注意

消炎鎮痛剤のロキソニンと抗生物質のクラビットは同時に処方されることが多くありますが、添付文書(医薬品の説明書)ではクラビットとロキソニンは併用注意となっています。

なぜクラビットとロキソニンが併用注意なのかというと、併用によって神経内の興奮を抑える働きが強く阻害されけいれんを引き起こす可能性が僅かにあるためです。特に服用開始時は注意を払いましょう。

クラビット単体でもけいれんの副作用が稀に報告されています。そのため、てんかんなどけいれん性疾患の持病がある方、抗生物質でめまいなどの副作用が起きたことのある方はクラビットの服用に慎重な注意が必要です。

また、高齢者や腎障害の方は薬の排泄が遅れ血中濃度が高くなりがちです。副作用の発現リスクが上がるので同じく注意が必要なのでクラビットの服用を開始する前に必ず医師や薬剤師に相談してください。

クラビットとフルコナゾールの併用

フルコナゾールはアゾール系抗真菌薬で、カンジダ属およびクリプトコッカス属の真菌に対し強い抗真菌作用を発揮し、様々な真菌症や腟炎などの治療に多く使用されています。

フルコナゾールは真菌特有の細胞膜であるエルゴステロールの合成を阻害することで真菌の成長を抑制、死滅させる効果があります。一方、レボフロキサシンは細菌のDNA複製を阻害することで細菌の増殖を抑制して死滅させる効果があります。

クラビットの有効成分レボフロキサシンはニューキノロン系の抗生物質で、グラム陽性・陰性菌をはじめ、クラミジアやマイコプラズマといった幅広い細菌に対し強い抗菌作用を発揮します。様々な細菌感染症の治療に多く使用されています。

このように、クラビットは細菌・フルコナゾールは真菌と攻撃対象が全く違い、作用機序も全く違います。この2つの薬剤を併用していても特に問題ないので安心して服用してください。

クラビットの副作用

クラビットは抗生物質の中でも比較的副作用は少ない薬ですが、一番多い副作用は下痢です。クラミジアだけでなく腸内細菌も死滅させてしまうため、下痢が起こるのはある程度自然なことです。

クラビットだけでなく抗生物質全般でよく起こる副作用なので、軽度であればさほど心配いりませんが、血便や発熱を伴うなど症状が重い場合や服用終了しても改善しない場合は医療機関を受診してください。

また滅多に起こりませんが、重大な副作用として腎障害・肝障害・皮膚粘膜障害・血液障害・アキレス腱障害・横紋筋融解症・低血糖・不整脈・間質性肺炎・大腸炎などが報告されています。

その他の副作用として、吐き気や胃痛などの胃腸症状・発疹や光線過敏症などの皮膚症状・めまい・頭痛・眠気などが稀に報告されています。クラビット服用後に何らかの異常があればすぐ医療機関を受診してください。