日本でよく処方される低用量ピル

国内では約11種類のピル(経口避妊薬)が流通しており、主に婦人科クリニックなどで診断を受けてから処方されるお薬です。

ピルに含まれる女性ホルモンの容量によって、低用量ピル(50マイクロ未満)・中用量ピル(50マイクロ)・高用量ピル(51マイクロ以上)に分類されます。

日本では副作用の懸念から、低容量ピルが市場の大半を占めています。低容量ピルには、ヤーズ(バイエル社)、マーベロン(MSD社)、トリキュラー(バイエル社)、ファボワール(富士製薬)、オーソM(持田製薬)などがあります。発売された時期により、第1世代~第4世代に分類され、最近開発された第4世代のヤーズやルナベルは、超低用量ピルに分類されます。

初めてピルを飲まれる方には、主にトリキュラーが処方されるケースが多いとされています。

長年にわたり多くの人に愛用されている、ポピュラーなピルのひとつです。国内のクリニックを受診して処方される場合、避妊目的では保険の適用がないため自費診療になります。

トリキュラーのお値段はクリニックによりまちまちで、平均して1シート2,000~3,000円ほど(初診料・再診料として1,000円ほど追加)の価格となっています。都市部のピル専門外来は高く、地方の婦人科クリニックでは比較的お財布に優しい傾向があります。

トリキュラー、シンフェーズ 、プラノバール、マーベロンが比較的安く、ファボワール、アンジュが少し高めの値段設定になっております。

最近のデータによると、国内でピルを処方された患者さんの数は約132万人(2013年)にのぼるとされており、年々増加傾向にあります。

また学校の性教育でピルが取り上げられるようになり、ピルを飲み始める年齢が若くなってきていると言われています。ピルは生理がはじまった思春期から飲むことができ、健康でタバコを吸わない方であれば40代でも飲むことができます。

ピルは避妊目的だけではなく、生理痛や生理不順などの治療にも使われております。生理周期が安定せず、5日~1週間早くなったり遅くなったりする方にもピルが処方されます。また、生理日を早めたり遅らせたりすることも出来ます。

様々な臨床試験の結果、ピルを服用することで卵巣がん、不妊症、子宮内膜症、子宮体癌、乳房良性疾患を予防する効果も立証されております。ピルと上手に使えば、女性にメリットの多い薬と言えます。

初めて低用量ピルを飲む場合:避妊するため

欧米では気軽に飲まれているピルですが、日本は残念ながらピル後進国と言われています。ドイツでは50%、フランスでは40%の女性がピルを服用しています。

欧米では“ピルは女性の身体を守るもの”として位置づけられており、経口避妊以外にも生理日の短縮や延長、大人にきびの改善を目的に服用される方もいらっしゃいます。生理痛やPMS(月経前症候群)の緩和にも効果があります。

ピルはアメリカで開発され、日本では1957年に承認・販売されている歴史の古いお薬です。ピルには有効成分として、女性ホルモンの成分が配合されています。

エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類の成分が配合されており、ピルを服用することで体の中を妊娠している状態に近づけて排卵を抑制します。排卵の抑制することで、精子の子宮内侵入を抑制し、受精卵の着床を防ぐことで高い避妊効果を表します。

正しく服用することで、高い避妊効果を得ることが出来ます。国内の臨床試験の結果では、99.8%の避妊効果が立証されています。ピルの服用により生理を止めるわけではありません。そのため、ピルの服用を辞めることで、1ヶ月~遅くても3ヵ月後には生理が再開され、もちろん妊娠も可能です。

初めて低用量ピルを飲む場合:生理日を調整するため

ピル外来では、生理日を調整するためにピルが処方されることがあります。大事なイベントやレジャーなど、どうしても生理による出血や諸症状を避けたい日がある際に、ピルを使って生理予定日を早めたり遅らせたりすることが出来ます。

ただし、スケジュールに沿った服用が必要で、一般的には「生理日を早める」方法がより簡単で精度が高いと言われています。

生理を早めたい場合、すでにピルを飲まれている方は、服用中の低用量ピルの服薬日数を調整することで生理日の移動が可能です。

早めたい日数分のピルの服用を辞めて、休薬期間に入ります(5日早めたい場合は、5日予定された服用を辞める)。すると1~3日後に消退出血(生理に似た出血)が起こります。

ピルを始めて飲まれる方には、主に中用量ピルが処方されます。生理が始まってから5日目~7日目までの間にピルを飲みはじめます。そして、早めたい日までピルを飲み続けます。すると、飲み終えてから1~3日でいつもより少ない量の生理がきます。

生理を遅らせたい場合、すでにピルを飲まれている方は、22日目からの休薬期間に入らず、新しいシートから遅らせたい分のピルを飲み始めます。

ピルを飲み終えたあとも継続して消退出血を遅らせたいのであれば、次のシートのピルを飲み始めます。ピルの服用をやめると、1〜3日で消退出血(生理に似た出血)が起こります。

ピルを始めて飲まれる方の場合、生理予定日の5~7日前から飲みはじめます。遅らせたい期間中、継続してピルを飲み続けてください。ピルの服用をやめると、1〜3日で生理が来ます。

ピルは水以外で飲んでも大丈夫?

ピルは毎日決まった時間に、お水またはぬるま湯と一緒に服用してください。飲み忘れを防止するために、毎日の生活リズムに組み込むことが大切です。

他にサプリメントなどを服用されている場合は、基本的に一緒に服用いただいても問題ございませんが、医療用医薬品(医師の処方箋に基づき処方されたお薬)の場合は、かかりつけ医や薬剤師に相談の上で服用を検討してください。

基本的に水以外の飲み物との服用はできません。特にカフェインを多く含む飲み物である緑茶、紅茶、コーヒーなどとは服用を避けてください。

体の中で代謝・吸収される際に妨げになる可能性があります。また、牛乳やジュース、スポーツドリンクなどとの相性もあまりよくありません。特に、グレープフルーツジュースとピルを一緒に飲むと副作用が現われやすくなります。

ピルは他のお薬に比べて小さな錠剤です。そのため水なしで服用してしまう方もいらっしゃいますが、食道や胃の粘膜を傷つけてしまう可能性があるためおすすめできません。

また、小さいため飲めたかどうか不安になる方もいらっしゃいますが、口の中に残っていなければ問題ございません。低用量ピルは副作用が低いですが、それでも吐き気などの副作用が稀に見られることがありますので、食後や就寝前の服用をおすすめいたします。

ピルを飲み忘れた場合は?

ピルは飲み忘れが続くと、避妊効果など本来のピルの効果が発揮されません。そのため、毎日決まった時間に飲める環境づくりがとても大切です。

ピルの飲み忘れに気付いた場合、その時点がいつも飲む時間から24時間経過しているのかいないかを目安に対処法が異なってきます。

飲み忘れたのが24時間以内の場合、ピルをすぐに服用してください。ピルの効果が発揮されない可能性は極めて低くなります。そして、翌日は決まった時間に服用してください。

一方で、飲み忘れに気づくのが24時間を過ぎた後の場合は、原則ピルの服用を中止してください。1サイクルをリセットしてまた飲み始める必要があります。

今飲んでいたシートを捨てて、次の生理が来るのを待ってから新しいシートを飲み始めるのがもっとも推奨されています。但し、偽薬(28錠ピルの22日目~28日目)を飲み忘れていても問題ございません。本来は飲まなくてもいいお薬です。

ピルのシートに飲む日付と時間を記入することで、飲み忘れた際の対処が簡単になります。またピルユーザーのためのアプリも多数あります。

一定時間になるとアラームなどで知らせてくれ、自分が今何日目のピルを飲んでいるのかを管理してくれます。生理日の調整もスムーズにできるためおすすめです。

ピル服用中にお酒を飲んでも大丈夫?

ピルとアルコールの直接的な影響はないとされています。そのため、ピルを服用している期間もアルコールを摂取いただいても問題ございません。

ただし、大量のアルコールを一気に飲んでしまう暴飲や、過度な飲酒は避けてください。アルコールもピルも肝臓で代謝されますが、過度なアルコールの摂取で肝臓の機能を弱めてしまい、ピルがうまく代謝できなくなる可能性があります。

1週間に2日程度の適度なアルコールはストレス解消にも繋がるとされており、特にポリフェノールを多く含んだワインなどは血の巡り(血液循環)もよくなり、身体に良い影響を及ぼすことがわかってきました。

ただし、ピル服用中のたばこは控えてください。ストレス解消にたばこが手放せない方がいらっしゃいますが、喫煙されている方がピルを服用された場合、血栓症(血が固まる)のリスクが増加します。

インターネット上では、「1日10本までなら大丈夫」であったり、「35歳未満の若い女性はたばこを吸っていても大丈夫」などという記事を目にすることがありますが、それは間違いです。

海外でも喫煙者によるピルの副作用が多数報告されていますので、正しく服用するためにたばこは控えてください。

21錠ピルと28錠ピルの違いは何?

代表的な低用量ピルであるトリキュラーには、21錠ピルと28錠ピルがあります。多くのピルでこの2種類が用意されています。その違いは、休薬期間に偽薬を飲むか飲まないかの違いです。

ピルは服用開始1日目~21日目まで女性ホルモンの成分が入ったピルを服用し、その後7日間(22日目~28日目)は休薬期間(ピルを飲まない期間)が必要になります。

休薬期間が発生すると、29日目~また新しいサイクルでピルを飲み始めるのを忘れてしまう傾向があります。そのため、22日目~28日目までは女性ホルモン製剤が入っていない偽薬を飲む28錠ピルが人気です。

28錠ピルの場合、シートに沿って毎日決められたお薬を飲むことで、ピルの飲み忘れを防ぐことができます。

自分が今飲んでいるのが偽薬なのか有効成分が入っているのかを確認しながら飲みたい方は、21錠ピルを服用いただいても問題ございません。

国内のピル専門外来では、ほとんどが28錠ピルを推奨しております。21錠ピルと28錠ピルのお値段の違いもほとんどありません。もちろんその効果にも違いはございません。

トリキュラーを個人輸入で購入されている場合は、28錠のピルより21錠の方が低価格に設定されています。

低用量ピル飲み始めに注意する副作用は?

低用量ピルを飲み始めたときによく現われる副作用として、軽度の吐き気と頭痛が報告されています。発症頻度としましては、10人中1~2人の方に起こる副作用ですが、数日のうちにほとんどの方で症状が消失します。

これは身体の中を妊娠した状態に近づけることで起こる、“つわり”に似た症状だと言われていますが、重症化するケースはごく稀です。

その他に、胸が張ることがあります。生理が始まる2,3日前から胸(特に乳房)が張る経験をされたことも多いかもしれませんが、同じような症状がみられることがあります。胸のはりは1~2ヶ月続くこともありますが、ほとんどの場合日常生活に支障がないとされています。

また、生理の出血とは違う不正出血が見られることも10人中1~2人に起こるとされています。出血量は少量のため重い症状ではないことがほとんどですが、ナプキンを準備するなどの注意が必要です。

ピルの重大な副作用として、血管の中で血液が固まってしまう血栓症が報告されています。処置を怠った場合は危険な状態にもなりうる副作用ですが、非常に稀な副作用です。

35歳以上の女性でタバコを吸う方は、血栓症の発症頻度が高くなることが報告されているため、ピル服用に際しては特に注意が必要です。

2シート目からの飲み方・注意点は?

ピルは1シート28錠のピルが充填されており、28日を1サイクルとして服用いただきます。1サイクル服用いただいた後の29日目を2シート目の1日目とカウントして、また服用を始めます。

避妊目的でピルを服用される際は、生理が来ていた場合でも、生理が来ていない場合でも継続して服用いただいて問題ございません。

ピル服用中の生理は、通常の生理(月経)とは少し性質が異なり、医学上では消退出血と呼ばれています。従来の生理(月経)は子宮を妊娠できる状態にするために、子宮内膜が剥れて膣から外に流れ出ます。

一方の消退出血もほぼ同じ仕組みですが、主にピルの服用開始1サイクル目に多く見られ、2サイクル目以降は起きにくい傾向にあります。

これは、ピルに含まれる女性ホルモンの作用で、すこしずつ妊娠しにくい状態になっているためです。

ピルを服用開始して3サイクル目以降も継続して出血が見られる場合は、他の疾患による出血である可能性があるため、婦人科などの医療機関を受診するようにしてください。

また、ピルの飲み忘れにより生理のような出血が見られることがあります。飲み忘れの場合は、本来のピルの効果を発揮できていない可能性がありますので、飲み忘れを防止する対策が必要です。

一方で、生理日を早めたい、又は遅くしたい目的で服用される際は、2シート目からの飲み始めに注意が必要です。

早めたい日数分のピルの服用を辞めます(7日早めたい方の場合、1日~14日目までの間服用し、15日~21日までの7日分の服用を辞めます)すると1~3日後に消退出血(生理に似た出血)が起こります。

生理日の調整は1週間単位が調整しやすいとされています。また、生理日を調整したい場合、すでにピルを飲まれている方のほうが調整がスムーズにできます。

これは、体内の女性ホルモン濃度が一定に保たれているためです。そのため、水泳選手やアスリートの方たちが低用量ピルを普段から愛用し、生理日のコントロールをしながら大事な試合に臨まれているようです。